天下井公平という男
「High & Low The Worst X」3回目を観てきました。
最悪の男、天下井公平についての全く個人的で勝手な妄想&思い込みを書き散らかそうと思います。記憶違いで間違った記述があるやもしれませんが、その時はそっと教えてください(*- -)(*_ _)
映画のネタバレ大いにありますので未見の方はご注意ください。
トレーラー解禁時、天下井の台詞を聞いて少し引っかかるところがありました。
「仲間なんて信用ならねえ」は最初なんだか違和感があったんです。続く「駒だ」はスッと入ってきたのだけれど、役者としてキャリアを積んできている凌輝くんにしては何となく素人っぽいって。その後何度か聞いているうちに、あれ?なんか子供っぽい言い方だなあ、と幼さを感じるようになりました。
天下井ってもしかして内面に複雑なものを抱えている役?という疑問が沸々と湧いてきます。
その後雑誌などのインタビューで凌輝くん自身から何度となく天下井の人物像を聞く機会がありました。おかげでキャンペーン期間中に頭の中の天下井像がぱんっぱんに膨らんでしまいましたね。まして、そもそも推しが演じるというフィルターもかかっています。私は普段映画を観る時はあまり前情報を入れません。なのでもう少しフラットな状態で観たかったかなという気持ちもありますが、それはもう仕方がないので最初から天下井贔屓目線を断言しておきます(苦笑)。
前述の台詞に関しては本編を見て一応自分なりの答えを見つけました。
「信用ならねえ」と「駒だ」はシーンが別で発する相手も別。「信用ならねえ」は須嵜に対しての台詞でした。凌輝くんが天下井の須嵜への対し方は他とは違っていて、特別な感情が含まれているので注目して欲しいとまで言っていましたよね。多分あの台詞はその一連のものなんじゃないのかな。
須嵜が幼馴染であることが天下井にとってどれだけのバリューがあるのか、エピソードとしてははっきり描かれていませんが(逆に須嵜の気持ちは台詞はないものの堂々とアピールされているのが面白い)、それを表情やら声のトーンで表現したのが天下井。仲間なんて信用ならねえ、と言い放つも奥底に潜む須嵜への気持ちがあの少しトーンの違う台詞になったのではと思いました。
台詞回しに関してはもう一か所気になったところがあります。
地下のカフェ?だかスナック?みたいなところで三校連合の前で天下井が持論を講ずる場面。
ヒエラルキー云々(ハッキリ覚えてない💦)~俺についてくりゃ見せてやるよ
(あのシーンは須嵜は元より鮫岡の表情が気になってザワザワしました)
前半部は何やらテキストを読んでいるようで抑揚がなかった。あの部分だけ浮いて聞こえて妙に居心地が悪かったです。
Twitterなどであの持論は外から押し付けられたものをそのまま諳んじているだけなのでは?という考察をいくつか見かけました。なるほどね。例えば天下井家の帝王学の一環で幼いころから繰り返し教えられ刷り込まれたと考えるならば、いつの間にか天下井の行動を決定する信条となってしまったことにも納得がいきます。
加えて人間関係がヒエラルキーによって成り立つ世界観に棲んでいる天下井が、上層階級に属していなければ人間扱いされないという環境で育ってきたなら。もしくは支配者階級に在らねば自身の崩壊を招くような、トラウマとなる程の強烈な体験をしていたなら。天下井自身が社会を生き抜く方法論として自らの意思でかの持論を受け入れたのだろうと想像できます。あくまでも想像ですが。
それにしても、そんな天下井が育った天下井家とは一体どういうお家なのか考えただけでワクワクしちゃいますね(←)。
家長として、天下井グループ総裁として君臨する絶対的な存在。お父上かお爺様か。或いは両方か!?
天下井が須嵜と離れていた中学~高校2年までの間に一体何があったのかは是非とも知りたいところです。
映画冒頭、圧倒的な力による支配を見せつけるものの、物語が進むにつれて偽りの支配者である天下井の孤独、恐れ、焦燥感などが伝わってきます。
金の力を借りなければ他に人を動かす術を持たず、凡そ人の上に立つ器など持ち合わせていない天下井。
他者を信じることを拒絶し、時に見せる凶暴性はどこからくるのか?一方で常にイライラした様を見せる天下井が震える小動物に見えてくるのです。
これがいっそ血も涙もない冷血漢な悪役だったら見る方も楽だったかもしれません。
ところが天下井ときたら人間味がありすぎて見ていて辛くなる。極端に描かれている虚栄心、自尊心、傲慢さ、自己防衛本能…そんなものは多かれ少なかれ誰にでもある性質だと思うからです。
戦いの場が体育館に移ってからは本当にしんどかった。
最初は鬼邪高を見縊って余裕だったけれど次第に形勢不利になり、ついには追い詰められていく。(この流れを天下井の表情が見事に表現していてすごかったですね!)
卑怯な手をためらいなく繰り出してくる天下井をさすがに「誰か止めてー」っと叫びたかった…!
楓士雄と須嵜の壮絶な戦いを呆然と見守る天下井ですが、途中一瞬でも「もういい、須嵜」と思う天下井を見ることができたら、と甘ちゃんな私は祈るように見ていました。けれど天下井は最後の最後まで人と人との絆の存在に気付くことなく己の保身に徹します。
「俺の勝ちだ」ではなく「須嵜の勝ちだ」であったらどんなに(見る者の気持ちは)救われたか。
たたみかける様にかっこ悪い天下井を見せられて、こんな天下井にどんな譲れないもの、真っすぐさ(凌輝くん談より)があるのだろう?と映画を観終わった後ずっと考えていました。
本当に、しばらくは天下井の悪いだけではない人間らしさ?みたいなものを全く見つけることができず凹んでいたのですが…。
天下井って自分の陣営の人間に当たり散らしたり過度な悪態をついたりって一度もないですよね?
ちゃんと働けよ、的なことや失敗した人間に対しては自分でけりをつけろ的なことは言っていましたが、敵方でよく見られる粛清や見方をボコるシーンはなかったような気がします。
つまり何が言いたいかというと、天下井にはトップとしての矜持があるのではないかということ。
天下井にとっての人間関係は契約のようなもの(かなり一方的ではあるが)。成果が得られなかった場合の責任は自分にある。失敗の責任を駒に擦り付けるようなことはしない。トップに立つ者としての天下井の美徳。
そうして先の体育館でのシーンに戻るのですが、駒が負けた=俺が負けた。つまり須嵜の敗北は自分の敗北である故の発言。
「俺が…負けた?」(うらおぼえ💦)
最後の最後に刃物を持ち出したのは到底頂けませんが、天下井なりの最終決着の付け方だったのかもと思うと…ツラいなあ。
(幼少時、須嵜の仇討ちするのにバット持ち出すようなお子だしね💦💦💦)
最後に天下井と須嵜の関係について少し。
子供の頃の約束を天下井は覚えていたか問題笑。
とある動画で天下井は完全に忘れてたと言ってるのを見たのですが、そうなのかな?
幼少期の思い出シーンは2回流れましたよね。1回目は須嵜視点での記憶、2回目は天下井視点での記憶だったように感じました。須嵜に言われて天下井は思い出したともとれるし、ちゃんと覚えていたととれなくもない。
私は後者、覚えていた派ですが更に言うと覚えていたけど封印していた派です。
須嵜の父親はかなり初期の段階で事業に失敗して天下井家の運転手をしていたのかな?天下井は小学校から私立に通っていそうだけど、須嵜は遊び相手として天下井家に出入りしてたんだろうか。
中学になるとさすがにつるむこともできなくなって、もしかしたら天下井は遠方の私立中学に通うことになって須嵜と疎遠になったのかもしれない。
久しぶりの再会時、私は天下井の表情にちょっと嬉しそうな気配を見たんだけれど、須嵜は余所余所しかったですよね。あの時二人が距離を詰められなかったことで暗黙の上下関係が生まれてしまったと言えなくもありません。
唯一の友達だった幼馴染が駒へと堕ちた瞬間(涙)。
そこで天下井は保留になっていた約束もそのまま過去に閉じ込めてしまったんだ、と思うのです。
天下井の「気付き」は突然訪れましたね。
須嵜の必死の訴えが封印を解いて天下井はあの約束が生きていたことに気付きます。
あの時の天下井の表情が忘れられません。
その後の展開は何度見ても涙涙です。
たくさんの人たちが天下井と須嵜の関係性にKOされたようで、これはまあオタク心を刺激するよなあとニマニマしてしまいます。薄い本、きっと量産されるに違いない(笑)。
その後の天下井がどんな人間になっていくのか。
あれだけ性根が歪んでしまっているので😅意外と根っこのところが矯正されるには時間がかかりそうですが、無条件に自分を慕ってくれる人間の存在に気付いた天下井は強くなれるんじゃないかと思います。きっと、本当の意味で強いトップになってくれると信じたいです。